長岐俊彦・アトピー教室

ドイツのアトピードクター

ドイツのアトピードクター  1

アトピー治療でドイツを代表する、ミュンヘン工科大学・医学部皮膚科・部長教授のフィル・リング博士。
アトピー治療に初めて本格的に精神カウンセリングと光線療法(ドイツではアトピー治療の多くに利用されている)を応用した、フリードリッヒ・シュレップル博士。
まず、このお二人の考え方と治療法をご紹介しましょう。


ミ ュンヘン工科大学・医学部・皮膚科
フィル・リング博士/部長教授



ミュンヘン工科大学のフィル・リング教授は、アトピー治療の世界的権威で、日本のNHK・TVも、十数年前に「アトピー治療最前線」という番組で紹介しています。また、教授のグループは英国のオックスフォード大学の専門家グループと、共同でアトピー治療プログラムを開発しています。

*以下、リング教授のお話です。

アトピー性皮膚炎の発症の原因

アトピー性皮膚炎は、「アトピー体質」「ストレスに弱い性格」「乾燥肌」「弱い基礎体力」などの複数の要因が重なって発症します。冬に皮膚炎が悪化するのは、肌が乾燥しやすいからです。肌の乾燥はかゆみを引き起こすので、そこをかきむしり、自分で皮膚炎を悪化させます。
ところで、乾燥肌は体質なので、乾燥肌そのものを根本的に改善するのは簡単ではありません。しかし、乾燥肌に対するスキンケアの方法を覚えておけば、アトピー性皮膚炎を発症させたり、悪化させずにすみます。

皮膚科、精神科、栄養指導科のチーム体制

アトピー性皮膚炎の治療には、皮膚科、精神科、栄養指導科の専門家がチームになってあたることが必用です。
アトピーの原因には、ストレスが大きく関わっています。そのため、精神科のカウンセラーの役目がとても重要になります。また、アトピーには体質的な問題もあるため、体質改善のための食事療法が必用になります。食物アレルギーがある場合にはその対策が必要です。そのため、個別の栄養プログラムをつくりながら、食習慣の改善を指導する専門の栄養管理士の参加が不可欠なのです。
もちろん、皮膚炎の治療や、日常のスキンケアなどを含めて、全体の治療プログラムは皮膚科の医師がコントロールしていきます。

お医者さんは患者自身

私たちは患者さんに、「あなたの病気のお医者さんは、あなた自身なのです」と、考えてもらうようにしています。また、家族にも治療に参加してもらいます。われわれ医療スタッフはそれを手伝う役目なのです。
その理由は、アトピーの改善治療には生活全般が関わってきます。また長期間にわたり、日常生活の中で「セルフケア」をしていかなければなりません。本人がお医者さんのつもりにならなければ、治療が継続できないのです。家族もまた、色々な形で協力する必要があります。その間に不適切なケアをしてしまうと、さらに症状を悪化させます。
そのため、本人も家族も、アトピーの仕組みやケアの方法をよく理解することからスタートする必要があるのです。

家族も参加する治療プログラム

私たちの治療法の大きな特長に、患者さんとその家族が受けるアトピーの教育プログラムがあります。
子供のアトピーには精神的な影響が大きいのですが、子供がアトピーを抱えていると、それがお母さん自身のストレスになり、またお母さんのイライラが患者さんに跳ね返って二重のストレスになることがよくあります。
一方、お父さんは無関心で、そのこともお母さんのストレスを増幅させます。
そこで私たちのクリニックでは、家族も含めたアトピー治療の教育(トレーニング)プログラムを用意しています。そのプログラムは、英国のオックスフォード大学の専門家と共同でつくったものです。
講座はお母さんや家族のためのものと、患者さんのためのものがあり、それぞれに分かれて、週に1回、8週間連続して受けてもらいます。教育には、精神科、皮膚科、栄養指導科が連携してあたります。本人と家族の両方に理解を深めてもらうために、アトピーケアの本も発行しています。

あわてずに、迷わずに、プログラムにしたがって治療を進めていけば、必ず治ると確信してもらうことから、スタートします。

まずは、皮膚をかかない

皮膚炎を悪化させないためには、皮膚をかかないことです。
かいて皮膚を傷つけると、そこに細菌が繁殖してますます炎症は悪化していきます。その雑菌に免疫細胞が過剰に反応して、さらにかゆみがひどくなります。それをさらにかき続けると、炎症は傷でジュクジュクになり、傷が治まっても皮膚は厚く盛り上がり、ケロイド状になっていきます。そうなってしまうと、簡単には正常な皮膚にもどれなくなります。

かゆみを抑える簡単な方法

アトピー性皮膚炎の一番の問題は「かゆみ」です。
かゆみが出たら、ハンカチやタオルを濡らして患部を冷やすと、少しの間はかゆみが治まります。ペパーミントエッセンスのスプレーを持ち歩き、それを濡れタオルにスプレーして肌に当てると、より効果的です。
かゆみの部分を指で軽く押さえるのも、かゆみ止めの効果があります。ミントを配合した保湿クリームを塗ると、かゆみ止めになります。
かゆみが止まったら、かならず保湿クリームを塗り、患部を乾燥させないようにしてください。

ウェットラップ・ドレッシング法

かゆみを止めながら皮膚炎を抑える方法として、ウェットラップ・ドレッシングという方法があります。患部に保湿クリームを塗り、濡らしたバンテージ(筒状の厚手の包帯)で包んでおく方法です。
われわれのクリニックでは、保湿クリームはピーナッツのオイルとグリセリンを水分で混合したもの、さらにハーブ液を入れたものなど、患者の症状や好みに合わせて選べるようにしてあります。

その手順は、
①筒状のバンテージを患部の長さに2枚切っておきます。
②患部に保湿クリームをたっぷりと塗ります。
③ぬるま湯で濡らしてかるく絞ったバンテージで患部を包みます。
④さらにその上に、乾いたバンテージを重ねて、内側のバンテージを乾燥させないようにします。

これでかゆみが抑えられて、なおかつ保湿することができます。また、患部がカバーされているので、直接皮膚をかきむしることがなくなります。
顔の場合は、フェイスマスクを利用して、睡眠中に同じ手順で行います。体の大きな部分は、入浴後にすばやく保湿クリームを塗り、その上に肌着を着ます。
このウェットラップ・ドレッシングを睡眠中に行うだけでも、ずいぶんと効果があります。
 
睡眠中に、体の部分をウェット・ラップする場合は、シーツの下に防水マットを使用すると寝
具を濡らさずにすみます。

アトピー性皮膚炎の原因の一つが「乾燥肌」

アトピー性皮膚炎の患者さんは、一般的に乾燥肌です。したがって、日頃、肌を乾燥させないようにしっかりと保湿クリームで保湿することが必要です。
特に、入浴後は肌の皮脂が無くなっているので早く乾燥します。お風呂からあがったら三分以内に必ず保湿クリームを塗ってください。

保湿クリームは油分の多いものと
少ないものの2種類を用意


日中は、ベタツキによる不快感を感じないように、油分の少ないものを使用します。また、皮膚炎のストレスを忘れていられるように、鎮静作用のあるミントの入ったものをおすすめします。
夜は外出もなく、寝ている間はベタツキが気にならないので、十分に保湿できるように油分の多いものを使用し、患部にたっぷりと塗ります。また夜は、香りは必要ないのでミントは不要です。

症状の軽いときこそスキンケアが大切

患者さんは普通、皮膚が良くなるとスキンケアをしなくなります。しかし、それは間違っています。悪くなってからスキンケアをして、良くなると忘れるから、悪循環をくり返すのです。
症状の軽いうちに、皮膚をしっかりと保湿して、乾燥させないようにしましょう。スキンケアを休まずに、良い肌の状態を続けていけば、アトピー性皮膚炎のない正常な皮膚に戻っていきます。

冬のスキンケア

冬は、アトピー性皮膚炎が悪化しがちです。それは湿度が低く、また気温も低いので発汗が減り、肌の乾燥が激しくなるからです。そこで、冬の間は絶対に保湿を忘れないようにしましょう。
冬の間の保湿クリームは、油分の多いものがおすすめです。肌細胞が生まれ変わる夜の睡眠中は、たっぷりと保湿しましょう。

夏のスキンケア

暑い季節に、汗のかきっぱなしはよくありません。皮膚炎に寄生する細菌が繁殖してしまうからです。その細菌に皮膚の免疫細胞が過剰に反応して、かゆみが起きます。汗をかいたらぬるめのシャワーを浴びるようにしましょう。そのとき、シャワーの勢いを強くしないように注意すること。強いシャワーは後でかゆみを引き起こす可能性があるからです。そして、シャワーの後の保湿クリームを忘れないようにしましょう。

紫外線で皮膚の機能改善-光線療法

アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は、皮膚の免疫システムの異常や血行不良、かゆみの神経が過敏になるなどの異状状態にあります。そのため、皮膚の機能の改善や強化が必要です。
皮膚の機能を改善する方法のひとつに、紫外線を含んだ人工光線を照射する「光線療法」があります。患部が大きい場合は全身に照射し、患部が小さい場合は、小型の照射ランプで、患部に光線を当てます。

*ただし、紫外線過敏症の患者さんや、小さな子供には使用しません。

塩水と紫外線によるトメサ療法

トメサ(TOMESA)療法は、濃度の高い塩水のお風呂に入りながら、紫外線を含んだ人工光線を浴びる治療法です。
治療装置は浴槽と人工光線(紫外線を含む)の照射器を組み合わせたものです。患者さんは塩水のお風呂に入りながら、コンピュータの音声に従って体を動かし、患部に光線を浴びます。紫外線の照射量と時間は、患者さんの症状によってセットされます。浴槽の塩水は死海と同じ塩分濃度に設定されています。
夏に海水浴を続けていると、アトピー性皮膚炎の症状が軽減しますが、トメサ療法はその原理を応用したものです。

紫外線には、皮膚炎に繁殖した細菌を殺菌して炎症の進行を抑える作用があります。また、アレルギー反応を起こしている皮膚の細胞を刺激して、皮膚の機能を改善する作用もあると考えられています。
塩水には皮膚の角質を柔らかくして、水分の吸収を高める作用や、皮膚への紫外線の吸収を高める作用をします。

しかし、紫外線にはリスクもあるので、その照射は専門家が慎重に行います。また、皮膚が柔らかい子供には紫外線の照射はしません。

*炎症のひどい患者さんには、傷口に塩水がしみるので、塩水風呂は使用しません。その場合は、皮膚の感受性を高める薬品を患部に塗ったり、あるいはその薬品を入れたお風呂に入浴させてから、患部に紫外線を照射します。(ミュンヘン・皮膚科専門クリニック/ライナー・シェラー博士・談)

毎日の症状の変化を記録する

体調や心理状態が悪いときに、食べ物によってアレルギー症状が起きたり、またストレスによって症状が悪化する場合があります。しかし、そうした原因を知っておけば、それを事前に避けることができます。
特に、かゆみがひどくなったり、症状が悪化したときには、その前に何があったか、何を食べたか…などを記録して、アレルゲンを知っておくことが大切です。
また、症状が軽い、あるいはかゆみが出ないときの生活方法をできるだけ続けるようにしましょう。

ぜんそくがある場合は

日常的にはハウスダストに注意して、寝具はノン・アレルゲンのものを使用しましょう。シーツや枕カバーは毎週、布団カバーは毎月洗濯すること。
ぜんそくの重い方は、睡眠前に「ジルテック」という錠剤を飲んでおくと、睡眠中に発作がおきません。ジルテックはぜんそくとアトピー性皮膚炎の両方に効果があります。しかし、ジルテックの使用は根本治療ではありません。また、患者さんによっては副作用があるので、専門医の管理が必要です。

インターバル療法という、ステロイド剤の使い方

リング教授のチームでは、皮膚炎の症状に合わせて幾つかの薬品を使用しています。
しかし、ステロイド剤は原則的には使用しません。それは、初期段階での即効性はあるのですが、副作用があり、とても難しい薬だからです。
例外的に、外用薬として使用することがありますが、その場合は、インターバル療法という方法をとります。

◆インターバル療法
最初は、1日1回の使用を4日間続け、5日目は使用を止めます。次は、6日目、 8日目、10日目と、間隔を1日づつ空けて使用し、11日目、12日目は止め、13日目に使用、14日目、15日目は止め、16日目は使用、17日目、18日目、19日目は止め、20日目に使用というように、使わない日を徐々に多くしていき、ステロイドの依存から自然に抜け出せるような使い方をします。
また、ステロイド剤を使わない日は、必ず通常の保湿クリームで乾燥を防ぎます。

ステロイド剤を不用意に使い続けると、その依存症になるとともに、アトピー性皮膚炎そのものが治りにくくなっていきます。
そこで、徐々にステロイド剤への依存を減らしていき、保湿クリームとウェット・ラップを利用したスキンケアに切り替えていきます。

基礎体力を強化する、高地・環境療法

長期の入院治療が必要な患者さんには、スイスの山の上にある「ダボス・クリニック」に入院してもらう場合があります。「ダボス・クリニック」は海抜2000メートルの高原にあり、クリマテラピー(環境・気候療法)を織り込んだ治療プログラムが行われています。
高原の環境は、空気がきれいでアレルゲンがないため、正確なアトピーテストが可能です。また、平地に比べて皮膚の強化に役立つ紫外線の量も多くあります。適度な寒さや、酸素の量の少なさなどが、体の基礎体力をつくり直すのに役立ちます。
こうした環境のクリニックで、ストレスを消すための精神カウンセリング、植物成分の入浴剤や保湿剤・内服剤を利用した皮膚治療、それに、体質改善のための食事療法や、基礎体力を強化する運動療法などを組み合わせながら、「アトピー体質の改善」を行っていきます。

・精神カウンセリング
・植物性入浴剤
・植物性保湿クリーム
・植物性内服剤
・食事療法
・運動療法
・環境・気候療法

また、長期の入院に備えて「ダボス・クリニック」には、子供の学習のために、幼稚園や学校が併設されています。

●ドイツには、1200メートルの高原に、学校施設、さまざまな生活トレーニング施設を備えた、理想的なアトピークリニックがあります。
このサイトでご紹介している「サンタマリアクリニック」です。ぜひ、お読みください。

アトピーは必ず治る

アトピー性皮膚炎は、あわてずに、迷わずに、プログラムにしたがって治療を進めていけば、必ず治る病気です。
ストレスに負けないように、自信を持って毎日を過ごしてください。
そして、乾燥肌を守るための毎日のスキンケアを欠かさないでください。
そうすれば必ず、かゆみと、皮膚炎は次第に消えていきます
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by nagaki-toshihiko | 2010-07-29 17:37 | ドイツのアトピードクター 1

ドイツの自然療法
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